フォニックスとは

フォニックス (Phonics) とは?

フォニックスというのは、英語の文字の綴りと発音の対応ルールを学習する方法の1つです。

 そもそも、英単語の読み方はとても複雑です。/s/ とう音を表す綴りには sun の <s>, city の <c>, castle の <st>, psycology の <ps> があります。この複雑な綴りと音の関係を学ぶことがフォニックスといわれるものです。

 イギリスでは単語を覚えるには フラッシュカードなどを用いて、「単語を見て、それを言う」という Look and Say といういわゆる「丸暗記法」が長い間指導されていました。しかし、この方法ではなかなか単語を覚えることが難しい子どもたちが一定数いて、そうした子どもたちが職を得ることが難しいということが社会問題として挙がりました。

 単語というのは、それ単独では用いるわけでなく、文の中で必ず用いられているために、重要な単語を覚えるときには、絵本を用いて単語を覚える方法、ホール・ランゲージ whole language という指導法が台頭しました。ホール・ランゲージは、1980年代にアメリカの教育者が命名した指導法で、 Riggs (1991) によれば、「言語は”全体” wholeとして扱わなければ、それはもはや言語ではない」と唱えています。この指導は、例えば、色の単語を指導する際には、その色がついた絵と一緒に A red pencil. A blue pencil. A yellow pencil. と絵を見れば色がわかるような内容のチャンクや決まった形の文が提示され、単語をチャンクまたは文全体で覚えるように指導されます。(This is a map. This is a book. というように同じフレーズの文がひたすら続くものです。)

 子どもたちが英単語を読む方法として、単語を見て、その文字を音声化し、単語として読みます。これをディコーディング(decoding)と言います。例えば、sun という単語を見たときに s は /s/, u は /u/, n は /n/ という音を出して読む、ということです。まずは文字を見たときに音声化できる力を養い、そして、文を読んでいくには、この英単語の読み方だけでなく、文法、語彙なども個別に学んでいかなければなりません。こうしたアプローチに対して、異論を唱えているのが、ホール・ランゲージです。

 

 1998年に、米国学術研究会議が効果的な読みについての研究報告書 Prevention of Reading Difficulties in Young Children (Snow, Burns, and Griffin, 1998) を提出し、体系的かつ明示的に指導されたフォニックスは、ホール・ランゲージにおける embedded-phonics や、まったくフォニックスを使わない指導法より有効であると述べています。現在では、フォニックスとホールランゲージどちらかだけでなく、両方の利点を生かすことが奨励されています。
 
 
 さて、日本語の仮名文字は基本的に「一文字一音対応」ですが、英語はそうではありません。そのため、英語圏では子どもたちが読を習得するまでに、日本語と比べてもとても時間がかかります。フォニックスは英語を学ぶ子どもたちに効果的に読み書きを指導する方法として工夫・研究されてきました。フォニックスでは文字と音の対応規則を教えます。例えば「発音 /k/ は c, k, ck のどれかで書かれる」のように、ある音がどの文字と結び付いているかを学習することで、文字の音を組み合わせて知らない単語の音を推測し、読むことができるようになります。アメリカでは幼稚園から音韻認識(phonological awareness)の指導が始まり、段階を経てフォニックスを導入し、小学校3年生頃までにフォニックス学習が終わります。

 

参考: Approaches and Methods in Language Teaching 2nd edition
Jack C. Richards, Southeast Asian Ministers of Education Organization (SEAMEO) Regional Language Centre (RELC), Singapore, Theodore S. Rodgers, University of Hawaii, Manoa
 

 
英米でのフォニックス指導
文字と音の対応ルールを知ることで、初めて見た単語の読み方を推測したり、聞こえた単語の文字を推測することができるようになります。国によって
 
アメリカの1年生の国語学習事情
National Center for Education Statisticsの、Instructional Focus in First Grade(http://nces.ed.gov/pubsearch/pubsinfo.asp?pubid=2006056)によると、約60%の1年生が国語(reading and language arts)の授業や課題に費やす時間は一日90分で、他の科目の10倍多いということが指摘されています。また、80%以上の国語教師(公立・私立)がフォニックスを毎日取り入れていると報告しています。

イギリスの小学校では、reception (4-5歳児) のクラスから音韻認識を育てる活動、そして システマティック・シンセティック・フォニックス (Systematic Synthetic Phonics, SSP) の指導が始まります。そして、1年生 (5-6歳児) 終了時点で、全国一斉に フォニックス・スクリーニング・チェック (Phonics screening Check) を行い、児童がどれだけ読みの力が育っているか測定します。

 
異なるタイプのフォニックス
1.Embedded Phonics 
ホール・ランゲージで用いられている。実際に読書の過程で出てくる語彙の文字−音関係を指導するやり方。系統的な指導法ではなく、読みの最中に適宜教えるというもの。


2.Synthetic Phonics
 読みと綴りを同時に学習やり方です。文字を音に変換し、その音を合わせて単語を作る練習をします。英語には約44の音素があり、それぞれに、どの文字を用いて表現するかを学習します。そして、学習した音と文字のみを用いて、単語を読み書きします。また、よく用いられている音や組み合わせたら単語が作りやすい音から指導するため、abc順には指導しません。
 イギリス政府では s, a, t, i, p, n を最初に指導する一例を出していますが、この段階で、子どもたちは it, in, at, an, sit, sat, pin, pat, sap, sip, nap, apin, pants などの単語を読み書きできるわけです。そして、同時に単語を書くことも指導します。例えば、sit と教師が言い、子供たちは sit は s-i-t に分解できていることを理解し、それにあう文字を書きます。
 44音とその文字を学んだ時点で何千という単語が自分で読み書きできるようになります。その後は、同じ音であっても異なる綴り (alternative spellings) 例:ai には rain の aiをはじめに指導し、その後、ay (play) や a-e (name) を指導します。そして、フォニックスのルールにあわない単語 the, he, they なども指導します。
 英単語を読み書きするには、それをつくる 44 の音素を重視しており、それぞれ文字があることを指導します。音素に注目するため、文字の名前読みは初期の段階では指導しません。

 日本の国語と似た方法(ひらがな→カタカナ→漢字)の指導です。


3.Analytical Phonics
 単語の中の特定の音を分析するよう生徒に指示します。ホール・ランゲージと共に用いられることが多くあります。
 実際の指導方法は、例えば、b は /b/ という音を指導したい際に、教師は
「今日は b の音を勉強します。b で始まる単語を言ってみましょう」
とクラスで聞き、子供たちが「bat, bus, book」などと答えたら、それを黒板に書きます。次にそれらの単語最初はすべて b という文字で /b/ という音になっていることを説明します。そして、その文字を強調しながら、"B says b, b, b" と言います。c も同様に行い、26文字をまずは指導します。

 この方法はホール・ランゲージで子どもたちに本読みを指導していく中で、子どもが読めない文字が出てきたときに、その文字の音を言えるようになるために行われます。例えば、bug という単語があったとして、子供が読めないときには、 B says b, b, b と唱えてもらい、b で始まる単語ということを理解させます。
 最初に単語全体を理解してから細部へとアプローチするやり方で、文字に注目して、その音を学ぶという方法です。Synthetic phonics とは全く逆のアプローチになります。また、26文字が愁傷したら、Analytical phonics では、子音の混合を多く覚えます(例:'br','st' , 'bl'など)


4.Analogy Phonics
Analogy phonicsは、analytical phonicsの1つで、単語の”固まり(chunk)”に注目するため、chunkやword familiesと呼ばれることがあります。たとえば教師は、'at', 'an' or 'ip'で終わる単語に注目させ、語頭の文字を入れ替えた練習を行います。(例:mat, sat, hat, rat, cat)

参考:https://www.gov.uk/government/publications/phonics-screening-check-data-collection-guide (シンセティック・フォニックス)


 

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